新しい仕事に挑戦し、
できることが少しずつ増えていった頃。
皮肉にもそのタイミングで、
会社全体は確実に“下り坂”へ向かっていた。
■ 「自分は成長している」その裏で会社は売上が落ち続けていた
僕は新しい業務に挑戦し、
叩かれながらも経験を積み、
希望する部署の長にまでなった。
少しずつ自分に自信が持てるようになっていた。
ところが会社の売上はというと、
気づけば毎年じわじわと下がり続けていた。
はっきりとは言われないけれど、
社内の空気は次第に重くなっていった。
以前は勢いがあったはずの会社が、
どこか焦りのような、沈みゆく船のような雰囲気に変わっていった。
■ それでも会社側は「何もしない」という選択を続けていた
売上が下がっているのに、
何か新しい戦略を出すでもなく、
新しい事業を起こすでもなく、
市場の変化に合わせて動くでもなかった。
上層部がしたのは、“問題の本質に向き合わないこと”だった。
その代わりに増えたのは、
なぜか 社員向けのルールだけ。
・報告頻度の増加
・LINEでの細かい連絡義務
・毎日のメール報告
・意味のない業務の追加
本来は売上に直結しないようなことばかりが増えていった。
現場の負担はどんどん重くなるのに、
肝心の「会社としての対策」は一切進まなかった。
■ そして人が辞めていく
当然だが、
社員たちの疲労と不満はたまっていった。
辞める人がちらほら出始めたのも、この頃だった。
「あの人も辞めた」
「また辞表出たらしい」
そんな話が色々な部署で当たり前のように流れるようになった。
辞めた人の穴は誰も埋められず、
残った人の負担がさらに増えていく。
そしてまた辞める人が出る――
そんな悪循環が静かに、確実に進んでいた。
■ 成長しても未来が見えないという矛盾
僕自身はこの頃が一番成長していた。
新しい業務もできるようになり、
経験も増え、出世までした。
なのに、会社の未来は見えなくなっていく。
「このままいて、将来大丈夫なんだろうか…」
そんな気持ちがふと頭をよぎるようになった。
自分だけは成長している感覚がある。
でも、会社はどんどん沈んでいく。
その“ズレ”が、日を追うごとに大きくなっていった。
■ 僕の心に静かに芽生えたもの
売上の低下、
対策の放棄、
増える負荷、
辞めていく社員たち。
その状況を見ていて、
ある気持ちが静かに芽生えた。
「この会社……本当にこのままで大丈夫なのか?」
初めて、
会社という存在に対して疑問を持った瞬間だった。
それは後の“転職決意”につながる、
小さくて、でも決定的な気づきだった。

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