【第15話】努力して成長しても、会社はゆっくり沈んでいった

新しい仕事に挑戦し、
できることが少しずつ増えていった頃。

皮肉にもそのタイミングで、
会社全体は確実に“下り坂”へ向かっていた。

■ 「自分は成長している」その裏で会社は売上が落ち続けていた

僕は新しい業務に挑戦し、
叩かれながらも経験を積み、
希望する部署の長にまでなった。
少しずつ自分に自信が持てるようになっていた。

ところが会社の売上はというと、
気づけば毎年じわじわと下がり続けていた。

はっきりとは言われないけれど、
社内の空気は次第に重くなっていった。

以前は勢いがあったはずの会社が、
どこか焦りのような、沈みゆく船のような雰囲気に変わっていった。

■ それでも会社側は「何もしない」という選択を続けていた

売上が下がっているのに、
何か新しい戦略を出すでもなく、
新しい事業を起こすでもなく、
市場の変化に合わせて動くでもなかった。

上層部がしたのは、“問題の本質に向き合わないこと”だった。

その代わりに増えたのは、
なぜか 社員向けのルールだけ。

・報告頻度の増加
・LINEでの細かい連絡義務
・毎日のメール報告
・意味のない業務の追加

本来は売上に直結しないようなことばかりが増えていった。

現場の負担はどんどん重くなるのに、
肝心の「会社としての対策」は一切進まなかった。

■ そして人が辞めていく

当然だが、
社員たちの疲労と不満はたまっていった。

辞める人がちらほら出始めたのも、この頃だった。

「あの人も辞めた」
「また辞表出たらしい」
そんな話が色々な部署で当たり前のように流れるようになった。

辞めた人の穴は誰も埋められず、
残った人の負担がさらに増えていく。

そしてまた辞める人が出る――
そんな悪循環が静かに、確実に進んでいた。

■ 成長しても未来が見えないという矛盾

僕自身はこの頃が一番成長していた。

新しい業務もできるようになり、
経験も増え、出世までした。

なのに、会社の未来は見えなくなっていく。

「このままいて、将来大丈夫なんだろうか…」

そんな気持ちがふと頭をよぎるようになった。

自分だけは成長している感覚がある。
でも、会社はどんどん沈んでいく。

その“ズレ”が、日を追うごとに大きくなっていった。

■ 僕の心に静かに芽生えたもの

売上の低下、
対策の放棄、
増える負荷、
辞めていく社員たち。

その状況を見ていて、
ある気持ちが静かに芽生えた。

「この会社……本当にこのままで大丈夫なのか?」

初めて、
会社という存在に対して疑問を持った瞬間だった。

それは後の“転職決意”につながる、
小さくて、でも決定的な気づきだった。

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