高校を卒業してからの2年間。
僕は、働くことも進学することもできず、ただ時間だけが過ぎていった。
その理由の大きなひとつが、家庭の不安定さだった。
母は、昔から パチンコ依存症 だった。
家にお金がないのに、給料日になるとパチンコに行ってしまう。
その結果、家にはいつも借金がついて回っていた。
僕が子どもの頃から続いていたその問題は、
高校を卒業する頃には限界まで膨らんでいた。
そんな中、母が病気で倒れた。
そして、そのまま亡くなってしまった。
“悲しい”という感情だけでは説明できない出来事だった。
母は確かに僕にとって大切な存在だったけれど、
同時に家計を壊していた張本人でもあった。
複雑な気持ちを抱えたまま、
家庭はさらに混乱していった。
母の死後、家の借金問題が一気に表面化し、
父はとうとう 自己破産 をした。
「もうどうにもならない」
そんな空気が家中に流れていた。
将来を考えるどころか、
“今日をどう生きるか”だけで精一杯だった僕は、
気がつけば何もできないまま 2年間の空白 を過ごしていた。
そんなある日、ハローワークで見かけた
「1週間で3社、面接に行こう」
という一行が、突然胸の奥に引っかかった。
借金で荒れた家。
母の死。
父の破綻。
そして、自分の空白の2年間。
このままでは何も変わらない。
誰も助けてはくれない。
動かなければ、ずっと同じ場所にいる。
そう思って、久しぶりに自分の未来にギアを入れた。
履歴書を書き、面接の予約をし、スーツを着て外に出た。
本当に小さな一歩だったけど、僕にとっては人生を動かす大きな一歩だった。
そして、その週に受けた会社から電話が来た。
「採用です」
家庭は滅茶苦茶だった。
背負っているものも多かった。
だけど、誰かが僕を必要としてくれた。
働き始めてしばらくした頃、先輩が何気なく言った。
「ちゃんとやれてるじゃん」
たったそれだけの言葉なのに、
家庭では一度も聞いたことのない“肯定”だった。
母の死も、父の破綻も、僕が望んだことではない。
それでも、その現実と向き合いながら踏み出した一歩は、
確かに僕の人生を前に進めていた。

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